「朝10分方式」は、単なる時短術ではありません。
看護管理者研修のように「仕事+研修+レポート」を長期間続ける人には、かなり相性のいい学習方法です。
学習研究でも、まとめて一気に勉強するより、時間を空けて繰り返す「分散学習」が長期保持に有利で、さらに「思い出す」こと自体が学習を強化することが示されています。
ただし、ここでいう「朝10分」は、朝からレポートを書く方法ではありません。
むしろ、
朝10分で「今日一日、無意識に考え続ける問い」を脳にセットする方法
です。これが一番のポイントです。
1.朝10分方式の正体
例えば、レポート課題が、
「自部署における人材育成の現状を分析し、課題を明確にし、具体的対策を述べなさい」
だったとします。朝から30分、資料を読んだり文章を書いたりする必要はありません。
たった10分、
今日の問い
「うちの病棟で、中堅看護師が育たない本当の原因は何だろう?」
これだけを決めます。そして仕事に行く。すると仕事中に、
「あ、この場面も関係あるな」
「この人は主体的に動いているな」
「でも、なぜこの人は動けるんだろう?」
ということが自然に目に入ってきます。つまり、
朝10分
↓
日中の仕事
↓
無意識に情報収集
↓
帰宅後に5分だけメモ となります。これが非常に強いのです。
2.朝10分は「勉強時間」ではない
ここを間違えないでください。
朝10分で、
- 教科書を読む
- 論文を読む
- レポートを書く
- 理論を暗記する
必要はありません。むしろ、
朝10分=「問いを立てる時間」
と考えることをおすすめします。
3.具体的には、この10分です
0~2分:「昨日の自分」を思い出す
まずノートを開いて、
昨日、何に気づいた?
を1つ思い出します。例えば、
「スタッフに役割を与えると動き方が変わった」
とします。
2~5分:「なぜ?」を考える
そこから、
なぜ?
を1~2回だけ掘ります。例えば、
スタッフに役割を与えると動き方が変わった。
↓
なぜ?
↓
自分が必要とされていると感じたから?
↓
では、普段は役割や期待を明確に伝えられていないのでは?
ここまでで十分です。
5~8分:「今日の観察ポイント」を決める
そして今日、
「スタッフへの役割期待の伝え方を観察してみよう」
と決めます。これが今日のテーマです。
8~10分:「一言」を書く
ノートに、
今日の問い:スタッフが主体的に動ける条件は何か?
と書いて終了。本当にこれだけです。
4.なぜこれが効くのか?
人間の脳は、問いを持っていると、その問いに関係する情報を拾いやすくなります。
例えば、
「赤い車を探してください」
と言われたら、急に街中の赤い車が目につきますよね。それと同じです。講義で、
「組織文化」
と聞いても、以前なら、
「難しい理論だな……」
で終わる。ところが朝に、
「うちの病棟の組織文化って何だろう?」
という問いを持っていれば、講義の中で、
「あ、これはうちの病棟にもある」
と反応できます。つまり、講義を受ける前に「見る目」を作っておく。これが朝10分方式です。
5.さらに強力なのが「仕事を教材にする」
これは、あなたには特におすすめです。例えばレポートのテーマが、「看護補助者との協働」だったとします。朝10分、
「今日は、看護師と看護補助者の役割分担で“無駄”が起きている場面を1つ見つける」
と決めます。そして勤務します。すると、
「これ、看護師じゃなくてもできるのでは?」
という場面が見つかる。逆に、
「これは看護師がやらないと危険だ」
という場面も見つかる。さらに、
「そもそも役割分担が曖昧だから、毎回確認しているんだ」
という発見も出てくる。これがレポートの現状分析の材料になります。
6.「朝の問い」は1日1個だけ
これが重要です。欲張って、
「今日は人材育成と組織文化とリーダーシップと経営について……」
とすると失敗します。
1日1問い。
例えば、
月曜日
「なぜスタッフは改善活動に参加しないのか?」
火曜日
「参加しているスタッフと参加していないスタッフの違いは何か?」
水曜日
「主任は何をしているときにスタッフが動くのか?」
木曜日
「スタッフが動けないのは能力の問題か、環境の問題か?」
こうやって少しずつ角度を変えていきます。
7.実は「夜5分」をセットにすると最強です
朝10分だけでもいいのですが、朝10分+夜5分をおすすめします。
朝
「今日の問い」を決める。
日中
仕事をしながら観察する。
夜
5分だけ、
「今日、その問いについて何が分かった?」
を書く。例えば、
今日の問い
「スタッフが主体的に動ける条件は?」
↓
今日の発見
「役割を具体的に任せたときは動く。しかし、目的を説明せずに任せると動きが鈍い。」
これだけ。文章にする必要はありません。
8.これを7日間やると「現状分析」が完成してくる
例えば、
月曜日
「主体的に動けないスタッフがいる」
火曜日
「役割が曖昧なときに動きにくい」
水曜日
「目的を説明すると動きやすい」
木曜日
「任せる側が途中で介入してしまう」
金曜日
「失敗を避ける文化がある」
土曜日
「改善活動の権限が明確でない」
日曜日
ここまでのメモを見て、
「なるほど。個人の主体性の問題ではなく、役割・権限・心理的安全性の問題なのでは?」
と仮説が生まれる。これです。
9.つまり、朝10分方式は「レポートの材料を仕事中に集める方法」
ここが最大のメリットです。通常なら、
仕事
↓
帰宅
↓
レポートを書く
↓
疲れる
です。
朝10分方式なら、
朝:問いを決める
↓
仕事:観察する
↓
帰宅:5分メモ
↓
数日後:材料が貯まる
↓
レポートを書く
となります。
レポートを書くための時間を増やすのではなく、レポートを書くときの「考える負担」を減らすわけです。
10.さらに「講義の日」は使い方が変わります
講義のある日は、朝に、
「今日の講義から、自部署に使えるものを1つ探す」
と決めます。例えば、
組織論
「この理論でうちの病棟を見ると何が見える?」
リーダーシップ
「自分のリーダーシップの弱点は何?」
経営
「うちの病棟の強みと弱みは何?」
地域連携
「当院は地域から何を期待されている?」
人材育成
「うちのスタッフが成長する仕組みは本当にある?」
講義を自施設へのフィールドワークに変えてしまいます。
11.サードレベル期間中は「問いノート」を作ってほしい
これをかなりおすすめします。普通のノートではなく、
「管理者の問いノート」
です。1ページに1つの問い。
例えば、
なぜスタッフは変わることに抵抗するのか?
その下に、
- 今日の気づき
- 事実
- 仮説
- 理論とのつながり
- 追加で調べたいこと
を書いていく。完成された文章は必要ありません。むしろ汚くていいです。
12.このノートは、そのままレポートになります
ここが最大のメリットです。例えば1か月後に、
「組織変革について自部署の現状を分析し……」
という課題が出た。すると、「何を書こう?」ではなく、問いノートを見る。
すると、
・スタッフが変化に抵抗した場面
・なぜ抵抗したのか
・管理者としてどう対応したか
・うまくいったケース
・失敗したケース
・組織文化についての気づき
が既にある。これを7日間レポート法に入れる。
現状 → 理想 → ギャップ → 原因 → 課題 → 対策 → 評価と整理する。
つまり、
朝10分方式が「材料を集める装置」
7日間レポート法が「材料をレポートに変える装置」
という関係です。
13.あなたの場合、さらに「管理者の目」を育てる朝10分にしたい
これまでのお話から、あなたは現場経験がかなりあります。
だから、研修では知識を増やすこと以上に、今までの経験を理論で再解釈することに価値があります。
例えば朝、
「昨日起きた出来事を、管理者ならどう見る?」
と問いかけます。スタッフ同士が揉めた。普通なら、
「困ったな」
で終わります。管理者の目なら、
「個人間の相性の問題なのか?」
↓
「役割が曖昧なのか?」
↓
「情報共有の仕組みなのか?」
↓
「組織文化なのか?」
↓
「管理者の介入方法の問題なのか?」
と考えます。これを毎朝10分やる。すると、日常の出来事が全部「管理者の教材」になります。
14.忙しい日は「3分方式」に落としていい
ここも大事です。毎朝10分できない日が必ずあります。そんな日は、
① 今日の問い:1分
「なぜこの業務は時間がかかる?」
② 今日見ること:1分
「誰が・どこで時間を使っているか」
③ 夜の一言:1分
「原因は業務量より、手順の重複かもしれない」
これで終了。ゼロにしないことが大切です。
学習は一度に詰め込むより、時間を空けて繰り返す方が長期保持に有利という知見があり、朝の短時間+後日の再想起という形は、この考え方とも相性がいいです。
最後に、一番おすすめする使い方
研修期間中、毎朝この5行だけ書いてください。
① 今日の問い:
「なぜ〇〇なのか?」
② 今日見るもの:
「〇〇が起きる場面を1つ探す」
③ 今日の発見:
「〇〇だった」
④ なぜ?:
「〇〇だからではないか」
⑤ レポートとの接点:
「これは〇〇という課題につながりそう」
これを毎日10分。すると3~4か月後には、かなりの量の「自部署を分析した生データ」が貯まります。そして、これがあなたにとって非常に大きな武器になります。
朝10分は「勉強する時間」ではありません。
「今日一日、自分の病棟を研究するための問いを仕込む時間」です。
この発想に変えると、サードレベルの研修と現場の仕事が別々ではなくなります。
研修=理論を学ぶ場
仕事=理論を試す場
朝10分=今日見るポイントを決める場
夜5分=発見を記録する場
レポート=3~4か月の観察結果を整理する場
という一本の流れになります。
これなら、120~180時間の研修も「耐える時間」ではなく、自分の管理者としての引き出しを増やす期間に変えやすいと思います。
さあ、これで研修を乗り切ろう!Report-Go!